第一話 エヴァンゲリオン、出現

アスカ・ブライト ~茜空の軌跡~ FC
第一章『父、旅立つ』
第一話 エヴァンゲリオン、出現


 

西暦2015年、日本の領海に突然謎の巨大生物が出現した。
その巨大生物は『使徒』と呼ばれ、倒さなければ『サードインパクト』と言う大爆発を起こされ人類は滅亡すると、国連のトップの内では知られていた。
国連軍は在日アメリカ軍と日本の戦略自衛隊を主力に戦いを挑んだが、使徒の前に敗退。
しかし、その使徒を倒す切り札を持つ、『特務機関ネルフ』と呼ばれる超法規的軍事研究組織の本部が日本には存在していたのだ。
特務機関ネルフは、『エヴァンゲリオン』と呼ばれる巨大人型ロボットのような外見の兵器で襲いかかって来た使徒を倒す事に成功した。
エヴァンゲリオンは、零号機、初号機、弐号機の3機が存在し、そのパイロットは3人とも14歳と言う思春期真っ只中の中学2年生の少年少女だった。
零号機のパイロットは、綾波レイ。
初号機のパイロットは、碇シンジ。
弐号機のパイロットは、惣流=アスカ=ラングレー。
この3人は、ネルフの士官である葛城ミサト1尉の作戦に従い、次々と本部を襲いかかって来る使徒をエヴァンゲリオンで撃退して行った。
物語は、ネルフ本部のある第3新東京市に第14使徒レリエルと呼ばれる使徒が襲来して来た所から始まる……。

<第三新東京市 市街地>

突然、市街地の郊外の上空に巨大な白黒縞模様の球体が姿を現し、浮遊しながらゆっくりとネルフ本部へと接近して来た。
ネルフ本部は巨大な球体は使徒と断定し、エヴァンゲリオン初号機、弐号機、零号機の三機による迎撃を決定。
ミサトが立てた迎撃作戦の内容は、先日のシンクロテストで一番の好成績を残したシンジの乗る初号機が最初に攻撃し、零号機と弐号機は後方で待機して様子を見るというものだった。
そしてミサトがシンジにライフルによる遠距離からの攻撃の指示を下そうとする直前、アスカの乗る弐号機が初号機の前をさえぎり、使徒の元に突撃した。

『アスカ、あなたはバックアップのはずよ、戻りなさい!』

ネルフ本部で作戦の指揮を執るミサトの声がエヴァ各機に伝えられるが、アスカの乗る弐号機は動きを止めなかった。
先日のシンクロテストで好成績を残したシンジが先陣を切るなど、今まで3人の中で一番のエースパイロットだと思っていたアスカのプライドが許さなかったのだ。
弐号機は斧の形をした武器を振りかざすと、使徒の本体だと思われる浮遊する球体にジャンプして切りつけた。
しかし、その弐号機の攻撃は空を切り、着地した弐号機は足元から地面に映る球体の影だと思われた部分に飲み込まれて行った。

『ちょ、ちょっと、コレ、どうなってんのよ!?』

突然の事態にパニックになる弐号機のパイロット、アスカの声が通信を通じて初号機に居るシンジ、発令所に居るミサトに伝わった。
そのアスカの声を聞いた初号機のパイロット、碇シンジは沈みゆく弐号機の元へと走り始めた。
エヴァンゲリオンにはアンビリカルケーブルと言う電源を供給するためのケーブルが尻尾のように伸びている。
そのケーブルを引き揚げれば、安全な場所から弐号機を引っ張り上げる事ができたのかもしれないが、冷静さを失っていたシンジには思いつかなかった。
さらにシンジは以前、使徒との戦いで弐号機が火口のマグマの底に沈みそうになった時、弐号機の腕を直接取って助けたと言う事を思い返したのだ。
弐号機の方も初号機に向かって手を伸ばし、初号機は弐号機の手をつかむ事に成功した。

『シンジ君、弐号機を離して撤退しなさい! あなたまで巻き込まれるわ!』

ミサトの言葉通り、初号機も黒い影に飲み込まれかけていたのだ。
しかし、初号機を操るシンジは決して弐号機の手を離そうとしなかった。
そして、初号機と弐号機は頭の先まですっぽりと黒い影の中に飲み込まれてしまった。

『レイ、アンビリカルケーブルから初号機を引き揚げて!』
『了解……!』

ミサトの指示を受け、零号機は急いでアンビリカルケーブルを引き揚げ始めた。
レイにとってシンジは心を開いた大事な相手。
何としてでも初号機を助けたかったが、その願いは無残にも打ち砕かれた。
引き揚げたケーブルの先には、何も無かったのだ。

『碇君……!』

零号機のパイロット、レイの目から涙があふれた。

<リベール王国 ヴァレリア湖>

黒い影に飲み込まれた初号機と弐号機のパイロットであるシンジとアスカは、落ちて行く中で浮遊感のようなものを感じていた。
視界一面に広がる闇。
初号機は自然と弐号機に抱きつくような姿勢を取っていた。
そして突然視界が明るくなり、着水の衝撃音が辺りに響き渡る。
湖の水深は直立した初号機と弐号機が胸の高さまで沈み込む程度のものだった。
エヴァンゲリオンの内蔵電源は空になってしまい、初号機と弐号機のパイロットであるシンジとアスカは機体の首の付け根に当たる部分から機体の外へと脱出し、エヴァの肩の上に乗った。

「な、なんでアタシを助けるなんて余計な事するのよ、おかげでアンタまでこの様じゃない」
「ご、ごめん……僕のせいで……」

助けられた事に素直に感謝を示せないアスカは強がってシンジを怒鳴ってしまった。
怒鳴られたシンジも反射的にアスカに対して謝ってしまう。
アスカは気分を落ち着かせるために湖の周囲を見回すと、おかしなことに気がついた。
周囲の岸辺に高層ビルのような近代的な建築物が見当たらないのだ。
透き通るような青い空には鳥が舞い、飛行機の姿すら見当たらない。

「アタシ達、とんでもない田舎に漂流してしまったのかしら?」

アスカはそんな事をポツリとつぶやいた。
エヴァに内蔵された携帯電話も確認してみたが圏外なのか通じない。
岸まで泳いで行くにしてもかなりの距離がある。
アスカは諦めてこのまま救助を待つことにした。
そして、シンジとアスカの間の沈黙が気まずい雰囲気を作り上げそうになった時、大きな水音が2人のもとに近づいて来るのが分かった。
その水音の正体は、カシウスの乗るエンジン付きのボートだった。
カシウスはぼう然とするシンジとアスカの目の前で、ボートからエヴァの肩へと飛び移った。

「この湖に落ちて来たデカ物はお前さん達のものか?」

突然話しかけられたアスカとシンジは何の反応を示す事も出来ず、固まるだけだった。
すると、カシウスは困った顔になり、持っていた棒でアスカとシンジの急所を叩いた。
声も出せず体から力が抜けて倒れるアスカとシンジ。

「時間が無くて手荒な方法を取るしかないんだ、すまんな」

カシウスはそうアスカとシンジの耳元でささやきかけると、アスカとシンジの体をかついでボートに乗せ、ボートを走らせた。

「知らない天井だ……」

シンジが意識を取り戻して目を覚ますと、そこはヴァレリア湖の湖畔に建つ川蝉邸の客室だった。
隣にはアスカが寝かされている。
シンジはアスカが居る事に安心してため息をもらした。

「よお、お前さん、目が覚めたか」

シンジはカシウスに声をかけられて驚いて振り返った。

「まあ、そんなに怯えるな。これからお前さんに事情を説明するから。そうだ、お前さんって呼び続けるのも味気ないから、とりあえず名前を教えてくれないか?」

カシウスの穏やかな口調にシンジも安心したのか、シンジも素直にカシウスの質問に答えようとする。

「僕の名前は、シンジです」
「そうか、俺はカシウス・ブライトだ」

笑顔のカシウスに伸ばされた手をシンジもつかみ、照れ臭そうに握手を交わす。
これはシンジがカシウスに心を許した瞬間でもあった。
これが、カシウスとシンジの出会いだった。


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